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航空宇宙工学を取り入れた風力推進船の共同研究成果とその提案 船体と帆の風力利用船型「Sailed Ishin船型」

2024年12月19日

商船三井テクノトレード株式会社

 

航空宇宙工学を取り入れた風力推進船の共同研究成果とその提案

船体と帆の風力利用船型「Sailed Ishin船型」

 

 商船三井テクノトレード株式会社(代表取締役社長:川越美一、以下「MOLTT」)、東海大学(学長:松前義昭)、株式会社三井造船昭島研究所(代表取締役社長:五十嵐和之、以下「三井昭研」)、株式会社商船三井(代表取締役社長:橋本剛、以下「商船三井」)の4者は、2021年より航空宇宙工学を取り入れた船舶の風利用推進に関する共同研究(註1)を着手し、その成果を得ることができました。

 本成果は、小型高揚力帆と風力活用船体形状を組み合わせた「Sailed Ishin 船型」として船舶の省エミッション技術として提案してまいります。

 Sailed Ishin船型は、水面上の風力受圧面積の大きい箱型船型(自動車運搬船など)の船体形状を流線形に最適化、上甲板に小型の帆を搭載し、風流れを帆に当て揚力を得る仕組みとしており、12%の省エミッション運航が期待できます。

 水面上の船体形状は、Ishin船型(註2)として風圧利用・抵抗減少させる流線形の船型として一部適用船が就航しておりますが、その船型を小型帆搭載向けに最適化させました。

 また、小型帆については、航路により水面上高さ制限があること、さらに低コストを実現するため、できるだけ高さと重量を抑えることを目標として開発しています。高さを抑えた低アスペクト比の帆は、単に風の整流や受圧では性能が出ないため、東海大学航空宇宙学科福田教授(註3)考案の航空宇宙機材向け高揚力翼をベースとして開発を行ないました。

 尚、本成果については、特許申請、形状における意匠の申請を行なっています。

          

     

         

 

船体形状      帆搭載に最適化した改良ISHIN船型
斜め向かい風における船体の風圧抵抗軽減および推力、
および上甲板の風流れ最適化。
帆の形状      翼形状の帆、2分割
帆の重量      30トン程度
主な材料      鋼材
期待される効果   改良Ishin船型と小型帆を合わせて12%
(北太平洋航路往復平均、帆1枚のケース。研究理論値では16.8%)

 

 本開発は、日本舶用工業会、日本財団が実施する「新製品開発助成事業」2022年度にMOLTTが応募し採択され、2か年の実施期間を経て、実装レベルの開発に至ることができましたこと深謝いたします。

 あわせて、本成果は日本舶用工業会開催の「第32回舶用技術フォーラム」(2024年8月23日)において成果発表を行なっております。

 商船三井グループは「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」(註4)において、2050年までにグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成を掲げました。グループ一丸となって、船舶からのGHG排出削減に向け技術開発と実装に積極的に取り組むと共に、お客様や社会の環境負荷低減のニーズに応え、脱炭素化社会の実現に貢献します。

 

(註1)航空宇宙工学を取り入れた風力推進船の共同研究を開始~風力活用の船舶開発における新たなフェーズ~
https://www.motech.co.jp/information/2781/

(註2)ISHIN 船型
商船三井、MOLTT、三井昭研の3社で共同開発し、特許・意匠の登録を受けた技術であり、船首・船側方向からの風圧力を低減する形状とし、風の流れをスムーズにすることに加え、斜め向かい風から受ける揚力を船舶の推進力として利用する船型。
商船三井が建造を決定した、以下最新鋭LNG燃料フェリー2隻に適用される計画。
– 2022年02月17日 最新鋭LNG燃料フェリー2隻の建造を決定~風を活かすスーパーECOフェリー誕生 加速するモーダルシフトへの対応~
https://www.mol.co.jp/pr/2022/22022.html

(註3)東海大学 工学部 航空宇宙学科 福田紘大教授
流体工学および流体シミュレーション分野の研究者。航空宇宙工学分野、自動車工学分野、渦流れなどで多くの実績を有する。専門は、流体工学、空気力学、渦流れ、流体シミュレーション、非定常流れ現象。横浜国立大学 大学院 工学府 システム統合工学専攻 博士課程修了、博士(工学)。横浜国立大学・助手、米国University of Maryland・Faculty Research Assistant、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)情報・計算工学(JEDI)センター・研究員を経て、現在に至る。東海大学ソーラーカーチーム監督。日本航空宇宙学会、日本機械学会、自動車技術会(技術会議 委員 / 流体技術部門委員会 委員長 / CFD技術部門委員会 委員)、日本太陽エネルギー学会、日本ロケット協会の会員、米国航空宇宙学会(AIAA)・Senior Member。

福田研究室:https://www.eu.u-tokai.ac.jp/eu_faculty/fukuda
東海大学 工学部 航空宇宙学科 航空宇宙学専攻: https://www.eu.u-tokai.ac.jp/
東海大学ソーラーカーチームFacebook:https://www.facebook.com/tokaisolarcar

(註4)商船三井グループ 環境ビジョン2.2
https://www.mol.co.jp/sustainability/environment/vision/

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